ハイゼック

ハイゼックは、1997年にヨルグ・イゼックがスイスのモルジュに創業したブランドです。東ベルリンに生まれ育ったヨルグ・イゼックは、ドイツの芸術専門学校を卒業後、1973年にロンドンへ留学。現代アートの基礎を2年間で習得した後、ロレックス社のデザイン部門に就き、同社で4年間従事した貴重な経験をもとに独立して自身のデザイン会社「ハイゼック　スタイリング」を設立しました。

そこでは多くのスイスの名門時計ブランドからデザインの依頼を受け、彼のデザインの特徴である壮麗な描写は瞬く間に絶賛を浴びました。そして、1997年に自社ブランドを設立した当初は、独自のプロダクトとして高級筆記具を手がけ、ステーショナリーの分野で名門の筆記具メーカーから一目置かれる存在になりました。その人間工学に基づいたヴァイタリティ溢れるデザインを再び腕時計の製造に注ぎ込んでスイスの時計界にも君臨したのです。ドイツに生まれ、インダストリアルデザインに育まれた感性が放つバウハウス流のデザインと、グラスヒュッテの質実な伝統的時計製法を内包しつつ、スイス製時計の真骨頂であるムーブメントへの工芸美を見事に融合させたプロダクツとして、瞬く間に多くの時計関係者に注目されました。そして10年後の2006年、ヨルグ・イゼックは同ブランドの操業を後進に譲り、社名はハイゼックと改名され現在に至ります。現在の工房には、3.5または7軸の数値に制御された旋盤と最新の放電加工機が設備され、時計の心臓部であるテンプをはじめ、ムーブメントやケースに至るすべての部品を独自に製造することが可能です。伝統的な構造の自動巻ムーブメントだけでなく、文字盤にインパクトを与えるコンプリケーションなど、そのユニークな構造は明らかに他社とは異なる創造力の成果といえるでしょう。また、視認性を優先しながら飽きの来ない表情をダイアルや針に与え、エッジを際立てた精緻な仕上げのムーブメントのブリッジ、長く愛用できる耐食性や耐久性を追及した流線型のケースフォルム、操作性の良いシンボリックなリューズ、ストラップを固定するラグのビスなど、ハイゼックの工房から生み出される作品のすべてに独創的かつ極めて限定的な価値が与えられているのです。